映画「万引き家族」は家族の絆と社会問題の見えにくさを表現

こんにちは、ぐうたらスーパー主婦の糸野つむぎです。写真はマンションの横の紫陽花です。きっと誰かが鉢から外して地植えして育ったものです。花は濃い色で大きく存在感があります。

 

存在感といえば、「万引き家族」です。先日見てきました。これは見てみたい映画の一つでした。カンヌ最優秀賞を受賞し、大変注目されている映画です。そのこともあり、平日の朝9時という時間なのに、映画館は満席でした。

 

家族の絆と日本の社会問題の2つの側面

この家族は本当に暖かく、繋がっている

是枝監督の「そして父になる」や「海街diary」を見ているので、家族の関係の映画だと想像していました。もちろん、家族の絆を描いていますが、それよりも私には社会問題を訴えていることに興味をもちました。血のつながりのない人達が、人間の本来持っている暖かさで家族としてつながり、東京の都会の隠れた一角の狭い住まいで肩を寄せ合って暮らしています。

 

暮らしは貧しく大変ですが、本当に暖かい家族そのものです。つらい経験をしてきただけに、人のつらさがわかり、5歳の女の子であっても思いやりにあふれています。お互いに暖かい空気を通わせ合うことで、血のつながりを超えた本当の家族になっていくのです。

 

事情のある人達なので、できるだけ社会とつながりを持たないように生活しています。そういう訳で、日本の社会から見ると、見えない人達です。恐らく、戸籍や住民登録もしていなく、そうなると働ける場所にも限界があります。受けられる福祉にも限度があるのでしょう。

 

この家族は存在しているのに、日本社会では見えていない

事情のある人たちの集まりで成り立っているこの家族、事情の故に、色々な手続きができない境遇です。お役所関係の人が訪ねてきても、いないことにしないといけません。

 

ある事がきっかけで、この家族の存在が知れることになり、一家離散の場面があります。本当にみんながばらばらになり、それぞれのお役所関係で事情を聞かれます。その時の質問と答えがかみ合っていないのです。それは、この家族は優しさと絆の見えない価値観で生きてきたことに対し、社会の目は法制度などの見える物で人を生かそうとしている違いにあると思います。

 

この家族は一人ひとり別の場で質問を受けているので、見えない叫びをあげてもわかってもらえないでしょう。見える物によって裁かれてしまいます。でも、この一人ひとりを家族単位で見ると、もう少し理解してもらえるかもしれません。なぜなら、彼らは家族の絆で結ばれているのですから。家族として存在するために犠牲にせざるを得なかったことをわかってもらえるかもしれません。

 

万引き家族は持続できない

仮に、この家族の行ったことを社会が理解してくれたとしても、それは、事情がわかってもらえただけで、社会秩序などを考えると賛同はされにくいはずです。むしろ、この家族は何かをきっかけに立ち行かなくなり、離散する運命にあったと思います。あまりにも生活に無理があり、社会から抜けているので、病気をしても病院にすら行けない状況です。

 

男の子が、福祉のお世話になる際に、こんなやりとりがありました。

「学校は勉強ができない人が行く場所だから行かない。」

「家でできない勉強もあるよ。学校は出会いの場、友達ができる。」

 

そうか、この子は家族しか知らなかったんだな、と思いました。家族の絆は大切ですが、社会との繋がりを経験しないまま育っていたのです。男の子はこれを聞いて、目を輝かせました。子どもには、教育を受ける権利があるのです。それは、家だけでは得られない将来の糧です。教育を受けて、知識を元に考えることをを学べば、生き方の選択肢を広げられます。たくさんの人と出会うことが、これからの人間関係に役に立ちます。教育は希望を育てます。

 

貧困・DV・ブラック企業・虐待など、社会問題のひとつひとつの背後に複雑な事情があります。しかも、繋がっていることもあり、解決はとてもデリケートな問題です。ただ、見えないものとして、目をつぶるとそれまでです。

 

駄菓子屋のおじいさんは、兄妹の万引きに気がついていました。お兄ちゃんに、「妹にはさせるなよ」と一言静かに言い残しました。このおじいさんは、目をつぶらずに、声に出してくれたのです!それから、物語は進んでいくことになったのです。

 

この映画の万引き家族は人間くさくて、暖かい家族で応援したいのですが、本当に幸せになってもらうためには、普通に生きていく力をつけないといけません。これが家族が持続する道です。

 

この万引き家族のような人達は、どのくらいいるのかわかりません。数は重要でなく、人を苦しませている社会問題のひとつひとつに目を向けてほしい、というのがこの映画のメッセージだと思います。

 

ここで冒頭の紫陽花に戻ります。

「紫陽花やこの地に根を張り色鮮明」

私のつたない一句ですが、自然に湧いてきました。誰かの物だった鉢植が公園の隅に地植えされ、そこの土に根を広げ地域社会に生きています。色合いといい、ボリュームといい、存在感たっぷりです。万引き家族の絆は素晴らしいけれど、彼らを支える基盤、優しさは個人の意識からだと思います。

 

 

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