安いものは買いやすいが、それで暮らしは豊かになるのか?

こんにちは、ぐうたらスーパー主婦の糸野つむぎです。

生活に必要な物の価格が下がると買いやすいくなって嬉しいですよね。一昔前よりも今の方が物がたくさんあって、価格も安くなって購入しやすくなっている気がします。収入が増えないし、物入りだし、この安さはありがたいのですが、少し不安もあります。

 

物が安いと、暮らしは豊かになる?

衣料品が安いことの裏話

衣料品が昔より安くなりました。ブランドものではなく、普通の庶民が買うレベルの衣料品です。このことで、消費者は、安いので、これまで我慢していた人も、よりたくさんの衣料品を購入できるようになり、ファッションをより楽しめるようになりました。この点では、消費者に生活の潤いを与えてくれています。

 

しかし、実際のところは、安く売るブランドもたくさん出てきて、WORLDなどはたくさんブランドを持ち過ぎていたので、昨年思い切って整理しています。はっきり言って、アパレルは価格競争になっているところが多いと思います。普通に売っていては競合に負けてしまうので、製造・仕入を含めて安くおさえて、販売価格もすぐに割り引いて売られるようになってきています。バーゲンセールの開始が徐々に早まっているのにお気づきでしょうか?

 

価格が安くなってきているので、たくさんの衣服を製造したり仕入れたりして、たくさんの枚数を売ることで存命しているのでしょう。その多くの製造は外国、発展途上国に頼っています。日本は生地の生産は多いのですが、縫製を含む製造は発展途上国に頼りっぱなしなのです。

 

発展途上国で製造する理由は、日本国内よりもコストが安くなり、原価をおさえることができるからです。そして、定価を幅を持って設定しておき、赤字にならない程度の金額まで下げてセールに臨むのです。どこも同じようなことをやっているので、衣料品は売れ残ります。それを引き取ってオリジナルの販売ルートでさらに安く売る業者もあるようです。それでも残ったら廃棄ということになります。

以前、衣料の廃棄についての記事を書きました。

 

そんな業界の構造を知ってしまうと、日本人がみんな、安い商品ばかり追いかけ続けると悪循環に陥ることが想像できます。

安さにひかれての買い物が続くと…

•安さという視点にアパレル界が執着

•日本製が減り、日本の産業バランスが崩れる

•いったん崩れたバランスは取り戻しにくい

•外国製に頼ると、その国の労働力を搾取しがちになる

売る方は、消費者の買い物パターンに注目しています。このことから、私たちの買い物傾向が世の中の流れに少なからずや影響していると言えます。日本のGDP、伸びが悪いのは、価格が安いからかもしれません。

 

プリンター・ファックス機なども安くなっている

2年ほど前に勝ったプリンターは最新機で、機能が向上しているのに、2万足らずだったと思います。20年前ではその値段では決して買えませんでした。いい商品を効率的に生産する技術もできたのでしょうが、使ってみると、最新の機能であるにもかかわらず、プラスティックの部分が軽すぎて、すぐに壊れそうです。カバーや紙トレイは薄すぎて、収めたときのカチッという安定感に欠けます。

 

そう、機能は最新で、どんな人にも使える商品ではあるんですが、頼りないのです。なにかの衝撃で故障しないかと心配です。

 

良い品で安い商品は誰かに無理をさせている

普通のレベルの物が買いやすくなり、消費者としてはありがたいのですが、良い品で安い、というのは見えない所で無理をさせられている人がいるのではないでしょうか?

糸井重里さんが、柔らかい言葉で鋭く突っ込んでおられます。

・「安物買いの銭失い」というけれど、いまは、いい安物ならけっこうたくさんある。

それはそれで、ありがたい時代になったものだ。ちゃんとなにかが行き渡るということは、やっぱりいいことのひとつだと思うんだ。

でも、「いい安物」をつくるのには、けっこう誰かに無理をさせているようなところはある。

ほぼ日-今日のダーリン 糸井重里氏 2018/5/22

ねっ、うまく、心にはいってくる文章でしょう?

 

安いチョコレートの裏事情

チョコレートがわかりやすい例です。私たちは、板チョコを結構安く買うことができます。しかも、色々な種類があって、どれもおいしいです。バレンタインの前には、どーんと積んでいます。手作りチョコの材料にもできるし、安く買えるのはありがたいことです。

 

でも、このチョコレート、企業がたくさん売りたいので、生産地では、たくさん作ることが要求されて、大人だけの労働力では足りないので、子ども達も駆り出され、そのため、学校に行けない子ども達もいるそうです。その子達は、チョコレートの味を知らないとか。かわいそうな話です。

 

ですから、私達が安いと思って、このチョコを買えば買うほど、「売れている」と判断されて、現地での労働力は搾取され続けていくのです。それでも、安いからつい買ってしまいますが、事情は忘れないようにしたいと思います。

 

せめてもの努力として、ここ数年のバレンタインは、フェアトレードのチョコレートを買うことに決めています。価格は高いのですが、これを買うことで、現地の労働者に正規の賃金が支払われるなら嬉しいことです。私のバレンタインを受け取る人は、フェアトレード製品についての知識を持ってもらえると信じています。

 

見えないところで無理をさせているかも

糸井重里さんの文章は続きます。

それはそうと、コストということを思う。

「暴力というのは、いちばん安いやり方なんでね」と、かつて吉本隆明さんが言っていた。

たとえば親がこどもになにかさせようとするときに、しなかったら痛い目に合わせるぞだとか、自由を奪ってしまうような暴力を使うことは、最もコストをかけずに、目的を達成しようということだ。

拳銃を突きつけて、相手を従わせることも、爆弾をしかけて脅迫することも、安く手っ取り早く効果を得るための方法ではあるだろう。

ほぼ日-今日のダーリン 糸井重里氏 2018/5/22

 

商品の表面には見えないけれど、原料調達・製造・商談・出荷・流通の過程にはさまざまな人達の手を通っています。原料を手に入れるためには、パンであれば小麦が、小麦は国産なのか外国産なのか、小麦を育てるための肥料、畑… そんな過程には必ず人と人との交渉事があります。みんな自分の利益が欲しいので、交渉がいつも穏やかに終わることもないでしょう。人は、手っ取り早い方法で結論を急ぎがちで、それが相手に対しての「無理強い」をすることがあります。けんかごしの口調になることも。

 

良いものが安いのはありがたいけれど、その過程で無理を強いていることがあるとすると、その人たちがつらい思いをすることで、消費者が利益を受け取っている、ということになります。それは、本当に申し訳ないことです。それなら、もう少しだけ高ければ、無理を強いられる人は少なくなるのでしょうか?そして、日本のGDPも伸長していくのでしょうか?

 

簡単な問題ではありませんが、良品を安く買えることはありがたい反面、つらい思いをしている人がいるかも、ということは、時折でも、心に留めたいと思いました。物質的にだけでなく、精神的にも豊かな暮らしができるような社会が理想ですね。

 

 

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