からすのパンやさん~かこさとしさんの絵本は強くて優しい

こんにちは、ぐうたらスーパー主婦の糸野つむぎです。

5月2日、絵本作家で児童文化研究家のかこさとし(加古里子=本名・中島哲)さんが亡くなりました。高齢ということは知っていましたが、何か、ひとつの時代が終わったような悲しい気持ちになりました。

 

「からすのパンやさん」は家族の大切な思い出

我が家は子ども達が小さいころ、たくさん絵本を買いました。図書館にもたくさん借りに行きました。ぴえーる(息子)が小さい時に図書館で借りた「おたまじゃくしの101ちゃん」がかこさとしさんとの出会いでした。親子の絆を描いたスリル満点の絵本でした。男の子はここに登場するザリガニに必ず心を奪われると思います。

 

この絵本でかこさとしさんの絵本がおもしろいとわかって、次から次に図書館で借りました。何度読んでも楽しいので色々と買い求めました。その中の1冊が「からすのパンやさん」です。

ストーリーはこんな感じです。

彼らのおうちはパンやさん。とにかく忙しいのです。 朝早くから起きて、パンを作り、お店の掃除をし、お客さんにパンを売り。 その合間にあかちゃん達をあやしたり、抱っこしたり。 おっぱいをあげたり、おしめをとりかえたり。

そのうちに、お店がちらかってきて、お客さんも減っていき…とうとう貧乏になってしまいました。 それでも、子どもたちは元気に育っていきます。 お店で売れなかったパンやこげたパンなどは、みんな子どもたちのおやつになります。

そのおやつパンが、まわりの子どもたちの間で評判になり、みんなが買いにくることに。 そこで、「からすのパンやさん」は一家総出で沢山のパンを作ります。 とっても素敵な、変わった形のパンばかり。 かにパン、うさぎパン、パンダパンにはじまり、バイオリンパン、テレビパン、じどうしゃパンまで、何と80種類以上! 香ばしいにおいが森いっぱいに広がり、パンやさんは…大フィーバーです!!

 

このからすの両親は4羽の子ども達の世話が忙しく、パンを焦がしたり、お客さんを待たせたりして評判が落ちていたのに、家族全員で協力してお店を再生します。それも、とっても楽しいパンを作って!次のページが私のお気に入りです。

 

「からすのパンやさん」 かこさとしおはなしのほん7、偕成社

これは、ページの右側で、左のページにも楽しいパンの絵がたくさん描かれています。見開きで愉快なパンだらけなのです。実は、子ども達に詠み聞かせをするときは、このページが一番時間がかかるのです。それは、一つ一つのパンを 味・わ・う からです。

 

子どもが知っている物の形ばかりのパンです。かこさとしさんの暖かいまなざしを感じます。中には、だるまパン、てんぐパンなど、別の絵本の登場人物のパンも。のこぎりパン、のみパン(大工道具の)、はぶらしパンは意外で笑えます。4羽の子ども達と両親の生活の一部からの発想でしょうか。

 

そして、たくさんのお客さんが買いに来てくれます。しかしすごい数のお客さんです。ここで、パンやのおとうさんが、ある方法で、うまく列を分けて、お客さんには買いやすく、売る方には売りやすく並ばせてくれます。まるで、事故で大勢のケガ人が出た時のトリアージのようです。

 

本棚から久しぶりにこの絵本を取り出し、テーブルの上に置くと、ぴえーる(息子)もまりー(娘)も、までろん(夫)も全員が読み返していました。しかも、までろんは懐かしい節までつけて!読み聞かせをふたりでしていたので、繰り返すうちに、読み方にパターンができてくるのでした。

 

この絵本の中にも♪マークがついている箇所があります。消防車・救急車・警官がかけつける場面です。3番(?)までありますが、テンポがとても良く、字数もほぼ同じなので、3番とも同じリズムで読めます。たぶん、かこさんが意図したところだったのでは?

かこさとしさんのこと

かこさとしさんの絵本は、純粋に楽しいです!!図書館でいろいろ借りて、どうしても欲しい本を5~6冊ほど、購入して、まだ捨てないで持っています。子どものとの思い出がつまっていて、捨てられません。

 

かこさとしさんは、実は科学者で、科学絵本も書いています。東大工学部を卒業後、昭和電工に勤める傍ら、休日は困難を抱えた人々に寄り添うセツルメント活動に力を注いでいた、ということです。(朝日新聞2018/5/7)

かこさとしさんの言葉

「私の子ども時代はずっと戦争でした。繰り返してはいけない」

「子どもといえども、一人ひとりが個性や感性を持っている」

「子どもたちは未来を築く」

そういう思いで数多くの作品を世に送り出したということです。(朝日新聞18/5/8)

 

楽しくて、でも骨のあるの絵本は、かこさとしさんのこのような熱い気持ちがあるから、人の心を打ち、繰り返し読みたくなる絵本なんですね。

 

子ども達だけでなく、おとなの方にもお勧めします。「からすのパンやさん」ぜひ、読んでみてください。立ち読みは危険です。絶対に声を出して笑ってしまいます。

 

スポンサーリンク