こんにちは、ぐうたらスーパー主婦の糸野つむぎです。
前回は、女性専用車両①として、アンケート調査の回答結果から、
「女性専用車両は役に立つが、逆差別や不便性につながるかもしれない」
ということを読み取ることができました。女性専用車両導入のいきさつは、痴漢被害ですので、今回はそれを減らすために、男性・女性それぞれの立場からできることを考えてみます。
電車内で痴漢に遭わないように気をつけること
まず、女性の立場から気をつけて痴漢被害を被らないようにできることはないでしょうか?
電車内で痴漢に遭わないように気をつけていること
ここに警視庁による電車内の痴漢撲滅に向けた取組みに関する報告書があります。
その中のアンケート調査です。痴漢は被害者の羞恥心を利用して行われる犯罪ですので、非面接で匿名性の高いインターネットでの回答結果です。
このインターネットによる意識調査の調査方法は次の通りです。この記事に多く引用しています。
対象: 東京・名古屋・大阪居住で通勤・通学のために電車を利用している16歳以上の女性
調査期間: 平成22年8月3日~9日
回答人数: 女性2,221人、男性1,035人、計3,256人
女性に聞きました。「電車内で痴漢に遭わないように気をつけていることは?」
•座席の前に立つ(18.6%)
•混雑する時間帯を避ける(16.2%)
•ドアの近くに立たない(12.8%)
•イヤホンなどを使わない(4.6%)
なるほど、自己防衛をしっかり意識していますね。女性専用車両が1位です。その他、座席の前に立ったり、ドアの近くに立たないことを意識するのも上位でした。これらのことは、どのように痴漢被害と関係があるのでしょうか?
車内の痴漢が多発する場所
被疑者の意識調査を警視庁が行っていました。実施時期は平成22年6月~7月、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県で電車内での痴漢行為で検挙された219人に対しての調査です。
色々な項目がありますが、女性が気をつけていることが根拠があることかどうがを知るために、項目を絞ります。
Q. 被疑者に聞きました。「痴漢を行った車内の場所はどこですか?」
左右のドアとドアの間 | 57.5% |
座席の前 | 22.4% |
座席上 | 16.0% |
不明 | 4.1% |
「左右のドアとドアの間」という場所は、いわゆる「ドアの近く」で、座席からは死角になり易い場所です。特に四隅付近が多いとのことです。ですから、女性の多数が気をつけている「ドアの近くに立たない」というのは痴漢の発生率の高い場所を避けている、ということで理にかなっています。
痴漢に遭わないように女性が気をつけていることで、「座席の前に立つ」がありますが、これは、「人の目があれば痴漢行為は減るであろう」と考えた行為かと思います。正確には、混んでいる車内では、「座席に座っている人と向かい合うように、間近に立つ」ということでしょう。
痴漢の多発場所で、「座席の前」が第2位となって、一見矛盾しているように見えます。しかし、普通の電車の場合はロングシートが多いので、ドアの近く以外を「座席の前」と表現することができるのできわめて広範囲です。それに満員電車の場合は車両の中央の通路(=立つ場所)に三重にも四重にもなって立つこともあるのに、場所ということでは、それでも「座席の前」となってしまうのです。
痴漢被害にあっても、周囲に助けを求める人は少ない
痴漢に遭った時に取った行動として多い順(複数回答)に、
回答 | % |
我慢した | 52.6 |
その場から逃げた | 45.1 |
犯人に対して何らかの行動を起こした | 27.0 |
駅員に通報した | 6.6 |
周囲の人に助けを求めた | 6.3 |
「我慢した」「その場から逃げた」と回答した女性がとても多く、「周囲の人に助けを求めた」人はわずか6.3%です。満員電車で起こる被害で、周囲に人はたくさんいるのに、助けを求められない事情があるのでしょうか?男性側からの回答から探っていきます。
男性の調査回答結果が示唆すること
同様の男性に対する調査結果をご紹介いたします。調査対象は同じで、回答者数は1,035人です。
痴漢を目撃した時の行動は?
過去1年間で痴漢行為を目撃したとき、取った行動は?(複数回答)
回答 | % |
犯人を捕まえた | 19.0 |
痴漢を止めるよう犯人に働きかけた | 26.2 |
被害者に声をかけた | 32.1 |
どのような行動もとらなかった | 45.2 |
「どのような行動もとらなかった」との回答が約半分です。痴漢被害に遭った女性が周囲に助けを求めない理由はここにあったのでしょうか?
痴漢を目撃して何も行動できない理由とは?
では、どうして何もしなかったのでしょうか?(複数回答)
回答 | % |
犯人との確証が持てなかった | 57.9 |
関わり合いになるのが面倒だ | 36.8 |
急いでいたので時間をとられるのが嫌だった | 31.6 |
捕まえると逆恨みされそうだ | 21.1 |
「犯人との確証が持てなかった」の回答が非常に多いです。わかります。混んでいる車内ですし、周囲をいつも注意深く見ている訳ではありませんしね。もし違っていたら、と思うと声がでませんよね。
捕まえようとしてもみくちゃになったり、電車を降りて駅員室に行って話をしたら、また警察に事情を話したりすることを想像すると、「厄介だ」という気持ちもあるでしょう。出勤時はみんな急いでいますしね。
☆男性だけでなく、全ての人にできる簡単なこと☆
そんな場合、きちんと犯人を捕まえることを目標とせず、とりあえず、痴漢行為を止めさせることを目先の目標として負担を軽くしてみるのはいかがでしょうか?きっと被害に遭っている女性からも感謝されるはずです。
「被害者に声をかける」という提案をします。
例えば、少しだけ大きめの声でわざと周囲に聞こえるように、
「大丈夫ですか?」
と、被害にあっている女性に向けた声掛けをするのです。
犯人という確証も持てない状況で問題になってもいけませんし、出勤時に時間をとられることも最小限になります。この声掛けであれば、具体的に痴漢行為とは言っていません。かつ、犯人には聞こえるはずですので、見られていることがわかればそれ以上の痴漢行為はストップするはずです。犯人を検挙できるかどうかは別にして、犯人に恥ずかしいと思わせることができます。
もし、痴漢行為がそれでもおさまらないことがあれば、もう一度、少しボリュームをあげて、
「大丈夫ですか~?」
と声掛けをしてみてもいいのでは?車両にいるさらに多くの乗客が味方になってくれるかもしれません。一人だと大変な勇気がいることでも、手伝ってくれる人がいれば安心です。
この「大丈夫ですか?」という言葉は結構普段に使っていることばなので、発言しやすいし、聞く方もそんなに違和感のないことばです。敷居が低い言葉ですし、被害者に向かっての声掛けですので、トラブルにはなりにくいはずです。その人だけに声掛けするいたわりの優しさが本来の意味ですが、その人を守るために周囲を巻き込むという効果もあります。
例えば、どこかで困っている人を見かけた時、自分には助けてあげる力がないとしても、その人の気持ちには寄り添ってあげることができます。
「大丈夫ですか?」
そしてこの声掛けが聞こえた人は、なにか、ホッとするような気持ちにならないでしょうか?そして、声掛けをしている行為を見た周囲の人も気づくことがあります。気持ちに寄り添い、理解することから始まるんだと。
次回は、痴漢被害を減らすために、社会的にできることを考えてみます。そして、女性専用車両の結びをしたいと思います。